近年、市によって掩体壕についての説明板が取り付けられたが、特になにかが整備されるわけでも無く放置状態が続いている。

横須賀海軍航空隊により終戦間際の年に掘削されたこの壕は、航空機を空襲から守るために作られたという。
掩体壕はジョギングや散歩コースとなっている野島公園内に大きな壕口を開けている。

市が設置した説明板には当時の写真も提示されている。

山の反対側に回り込むと、こちらにも大きな開口部がある。
どうして壕口の形を変えているのかは分からないが、当時は貫通していたようだ。

掘削時の写真を見ると、手前にはトロッコの線路が敷設されているのが見える。

内部は中央の一部を除きコンクリートが巻かれているのだが、なぜ中心部が狭くなっているのかは不明である。

内部は比較的きれいな状態であるが、横坑などは土砂により確認できない。

また、奥に進むと土砂が積まれており反対側に抜ける事は出来ないようだ。

ということで、野島はこの巨大掩体壕が有名なのだが、海軍航空隊の記録を見ると、この掩体壕以外にも壕が掘られていた事が分かっている。
駐車場横にも塞がれた壕口がいくつも存在するのだが、整備された公園という事もあって、どの壕口もしっかりと塞がれている。
ところが、横浜・横須賀周辺で調査を進めているyakumo氏より、ついに侵入口を発見という一報が入ったのだ!!

週末を待ち、早速三重県から横浜へと車を走らせる。

調査当日。
駐車場脇にはあいかわらず塞がれた壕口があった。
以前カメラで隙間からのぞき込んだときに坑道が続いているのは確認していたのだが、ついにこの壁の向こう側に
行ける!!
ちなみに、野島には掩体壕の他に 3つの壕が存在している。
それぞれの壕は接合していないため、便宜上、海側より 野島A壕、野島B壕、野島C壕と呼ぶ事にする。
まずは、海側にある A壕から進入だ。

早速、進入可能な壕口に向かって進んで行く。

柵をごにょごにょし、薮をがさごそすると、やがて壕口が見えてきた。

匍匐で進入するために、シートを敷く。
それでも、隙間が狭いため、すぐに背中は泥だらけだ(´・ω・`)

ということで、みんなしてモグラのように穴の中へ。
この壕口は当初は隙間無く塞がれていたのだが、経年により土が沈み込み、上部に隙間が開いてしまったようだ。

壕内に入ると予想以上に広い。
壕床にはトロッコの枕木の跡がはっきりと残っている。

一部の坑道は水没していた。

ただ、水深はくるぶし程度なので長靴だけで余裕だ。

なんだかやけに広く掘ってある。

構造は基本的には碁盤の目状なのだが、接合部が微妙にずれていたりと、変化に富んでいる。

写真だと分かりにくいが、故意に段差をつけてある箇所があった。

法面に多数存在している壕口はしっかりと塞がれているので、壕内は完全な闇だ。

当時の物であろうか。
ガラス製の注射器が落ちていた。

塞がれた壕口付近は土かぶりが少ないせいか、草木の根が垂れ下がっている。

遊歩道に面している壕口は、石を積み上げ、外側からコンクリートで固めて塞いでいる。

ん!?
この形!!

まぎれもなくここだ!

外を覗くと、駐車場が見えた。

ふり返ったこの景色は、かつて壕内をのぞき込んだ時のものだ。
まあ、その時はここまではっきりとは見えなかったけど。

初めて野島を調査してから足かけ3年。
やっと入れた・・・。
なんだか感慨深いものがあるな。。

その後も壕内をみんなしてうろうろする。
今日は一人で潜ってないので、他のメンバーの明かりで壕内が明るい。

地下壕に興味無い人は、遊歩道の下にこんな空間が残されているとは思わないだろうな。

それにしても壕内はきれいだ。
不埒な侵入者がいないせいかゴミも無く、落書きも全く見つけられなかった。
しかも、この付近は壕床の状態も良く、このまま眠らせておくのはもったいない。

場所によっては水没箇所もあるが、どれも浅い物だった。

遺産として市で公開すればいいのにと思ったが、壕内に手を入れられてしまうのならこのままでいいとも思う。

遺物はほとんど遺されてはいなかったが、碍子や薬瓶のような物がいくつか発見された。

壕床に微妙な段差がある。

この部分も、一段高くなっている。
機械の設置を予定していたのだろうか。

かなり汚れるために、進入には覚悟が必要であるが、そんなことが気にならないくらいに素晴らしい地下壕だった。

この後、野島B壕、野島C壕へと続きます。
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